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\ event report / 第3回 講談まるまつ𠅘_2025年12月11日・12日



年の瀬の気配を帯びる師走中旬。
講談まるまつ亭は満員御礼にて全日程を終えることができました。
お待ちかねの皆さまも、初めましての皆さまも、お越しくださり誠にありがとうございました。
また実行委員会のスタッフさまをはじめ、たくさんのお力添えのもと温かな講談会となりました。
心より感謝申し上げます。
講談師 神田京子さんが素敵なゲストを招いて開く講談まるまつ𠅘、2年ぶりの開催となった今回のゲストは神田愛山さんと神田鯉花さんです。
どの日程も時間たっぷりに演じてくださり、研ぎ澄まされた語りの世界に浸ることができました。


神田鯉花さんが披露くださったのは古典「寛永宮本武蔵伝~狼退治」、「わんぱく竹千代」などです。
穏やかなマクラとはうってかわり、明朗な声色とリズミカルな調子に引き込まれていきます。
印象的だったのは活劇での狼の声。「ウォー!」「キャンキャン!」と鳴き真似が続く場面ではコミカルで痛快な展開にニヤリと口角が上がり、くすっとした笑いが止まりませんでした。


神田京子さんの初日は古典「青龍刀権次」。時代の光と影に翻弄される主人公の小悪党ぶりがユーモラスに語られ、その滑稽で悲哀な人生は今の時代に重なるところもあったのではないでしょうか。
2日目は山口ゆかりの新作を情感あふれる語り口で、ローカルなユーモアも交えて聞かせてくださいました。「金子みすゞ伝」では詩を盛り込んだ解釈と心情に胸を打たれ、「大内義弘伝」では熱く果敢な人生に想いを馳せました。過去と今を捉え直し未来に導く高座は、故郷を誇らしく思う気持ちに気付き、生き抜く勇気が湧いてきます。



そしてトリである主任を勤められたのは神田愛山さんです。古典では「葛飾北斎と谷文晁」と「赤穂義士伝銘々伝 大高源吾」を、新作の「就活物語」は人の本質を描いた一席を読んでくださいました。
淡々とした言い立ての奥底にある円熟の技。耳馴染み良い語り口と、静かな間合いから発せられるひと言が深く沁み入り、友情や別れに宿る美学は胸に迫るものがありました。
赤穂義士伝での「別れはその訳を語らず、語られることなく去る」という人の機微を捉えた言葉が今も心に残り続けています。




開演前や仲入りではあたたかいほうじ茶の振る舞いに合わせて、まるまつ食堂の焼き菓子が販売されました。この日だけの特別な松竹梅クッキーやフィナンシェなどが並び、お茶と一緒に召し上がったり、手土産に持ち帰られる方もいらっしゃいました。
okizaの敷地内ではアテコテさんと原口珈琲さんが開かれており、皆さまそれぞれに散策を楽しみながら満喫されていました。


日常の地続きに開かれる非日常“ハレとケのあいだ”を分かち合え、とても嬉しく思うと同時に、講談文化が地域と皆さまの暮らしに根付きつつあることを実感し、背筋が伸びる思いです。
また次回もお会いできますように。


こちらは講談の期間中、演者さんとスタッフさんを支えてくださった様々な食事たちです。
お馴染みのゴトウパンさんとまるまつ食堂のランチ、今回はおむすびころりんさんのおむすびも新たに加わりました。ご馳走様でございました。