about
残された風景から、
あたらしい文化が生まれる
私たちは常に自分以外の存在によって生かされています。例えば、誰かがつくったお野菜やお米をいただき、服を纏い、空間で時間を過ごすように。それは街も同じで、道、建物、草花など、誰かの営みから生まれた要素で成り立っています。
okizaは山口県山口市黄金町の、明治から昭和50年代にかけてつくられた9つの建物が並ぶ土地から生まれた、食堂、商店、シェアスペース、オフィスなどが集まる小さなコミュニティです。
これまで酒樽づくりや醤油醸造、四季折々の庭づくりや生き物の飼育を日常的に営んできた、当時の人々の暮らし。残された気配から感じるのは、人と人とが補いあうこと、地域とのつながり、生きるための知恵と工夫。そのまなざしは私たちの心を震わせ、深い共感へとつながっていきます。
この土地からいただいた気づきをいまに受け継ぎながら、皆で分かち合う暮らし。職・食・商・学・遊・住が混ざり合うokizaで、私たちらしい心地よさを創造したいと思っています。
土地の文脈に学び、
光と影を意識する
受け継いだ土地と建物に敬意をもち、リノベーションという方法で次の世代に伝えていくには?街の開発にはさまざまな視点と方法がありますが、私たちはこれからも続いていくこの場所の歴史の一部として、文脈を学び、お邪魔させていただいている・お借りしている・手をかけさせていただくという感覚を大切にしたいと考えています。
そして、季節の移り変わりや環境とともに生活すること。ここに初めて足を踏み入れたときに感じた、光と影の存在も意識しました。開けたところ(にぎわい、風通し、南側の明るさ)と、閉じるところ(静けさ、滞留、北面の明るさ)、柱や梁、土壁や、ひび・錆・欠けなど、経年によって変化してきたそれぞれの良さに寄り添う空間設計を意識しています。
自然とコミュニティが
生まれる存在へ
この土地は、大内時代に山口を訪れた明使の趙秩(ちょうちつ)が読んだ「山口十境詞」にも登場する景勝地。かつてはホタルの観光名所としても知られ、防府市や大内地域から山口市の中心地へ訪れる際の玄関口とされていた地域でした。戦後は多くの人々がここへ集まり、専門店や飲食店、社交場、銭湯などで賑わいながらも、暮らしに根付くローカルな通りとして親しまれていました。
夕方になるとお店や家の前の道路脇に「置き座」とよばれる涼み台が出され、ご近所さんやお客さんとゆっくりした時間を楽しむ習慣がありました。子をあやしたり、お茶でひと息ついたり、時には干物を作るなど作業台としても活用されていたようです。私たちのokizaも、名前の由来となった置き座のように、自然とコミュニティが生まれる存在を目指しています。
暮らしの名残りに
思いを馳せる
ここではかつて酒樽づくりや醤油醸造、調味料の量り売り、手動式洗濯機の販売、卸専門のパン屋といった商売をされる方、裁判所や県庁勤務の方、大工さん、山口大学の学生さんなどさまざまな人々が生活を営んでいました。暮らす人の視点を取り入れた建物や生活の名残りからは「用の美」に通じる美しさを感じることもできます。okizaを歩く際には、有形無形の断片に思いを馳せてみてください。